Sato

ウシロドプシンの活性状態のpH平衡とGタンパク質との結合状態の解析

by Sato Keita

ウシロドプシンの活性状態MetaIIとその前駆状態MetaIがpH依存的な平衡にあることを直接観測した。一方でMetaII形成に伴って起こるプロトンの取り込みはGタンパク質(トランスデューシン)との相互作用には不要であることを示した。

桿体視物質ロドプシンは光を吸収すると、Gタンパク質(トランスデューシン)を活性化する能力を持つ中間体MetaIIとその前駆体MetaIの混合状態を形成することが知られている。この2状態の量比は光照射時のpHによって変化し、またMetaIIの形成に伴って外液からプロトンを取り込むことが知られている(図1)。しかしこの2状態が平衡なのか、それともpHに依存した異なる反応経路をたどって2状態を形成するのかについてはっきりしていなかった。よって、これを明らかにするため、光照射後の試料に対してpHを変化させる実験を行った。結果、光照射後のpH変化によりMetaI、MetaIIの量比は光照射前にpHを合わせた場合と同様に変化した(図2)。つまりMetaI、MetaIIの2状態はpH依存的に直接平衡状態にあることが証明された。

さらに、これら2中間体とトランスデューシンの相互作用について詳細に調べるため、相互作用部位であるトランスデューシンC末端11残基のペプチドとその高結合性アナログを用いた実験を行った。ロドプシンとペプチドを混合した試料に種々のpHで光を照射すると、ペプチドによりMetaII量が増加する効果が高pHにおいてより顕著に見られるという結果が得られた。この結果を説明するため、過去の報告に基づいていくつかの相互作用スキームを考えて解析を行うと、プロトンを結合していないMetaIIもまたペプチドと結合し、MetaII形成後に起こるプロトンの取り込みがトランスデューシンとの相互作用に不必要であることが示された(Scheme2、図3)。

Rhodopsin and GPCRs

論文

Direct observation of pH-dependent equilibrium between metarhodopsin I and II and pH-independent interaction of metarhodopsin II with Transducin C-terminal peptide.

Sato K, Morizumi T, Yamashita T, Shichida Y

Biochemistry Feb 2;49(4):736-41. Epub 2009 Dec 23